AliceScriptの数値型は、倍精度浮動小数点数数値型と定められており、この規格はIEEE754として標準化されています。 しかしこの数値型で小数の計算をしているとき、その計算結果が期待通りでないことがあります。この記事では、その理由について説明します。

計算誤差の例

0.1 + 0.2 == 0.3

数学では、上記の式は正しくtrueと評価されますし、ほとんどの開発者も、それが正しいことを期待します。 では、AliceScriptでこの式を評価してみます。

print(0.1 + 0.2 == 0.3);

このコードを実行すると、falseが出力されます。

理由

これらの計算誤差はバグではありません。AliceScriptの数値型のような浮動小数点数数値型は、値を2進数で格納していますが、ほとんどの10進数の小数は2進数で表すことができず、その近似値として表現されます。近似値の誤差が例に示したような計算誤差として現れます。

知的好奇心旺盛なあなたのために、もう少し説明します。例えば10進数の0.1を2進数に変換すると0.0001100110011…となり、0011が永遠と循環します。そのため0.1を倍精度浮動小数点数数値型に格納するには、適当な桁で丸める必要があります。このとき、最も近い偶数に値を丸めます。その結果として0.1は数値型では2進数で0.0001100110011001100110011001100110011001100110011001101となります。これを10進数に戻す0.1000000000000000055511151231257827021181583404541015625となり、0.1ではなくなります。

ただし整数は、有効桁数15桁の範囲内であれば、正確に格納できます。また小数であっても、k/(2^n)(kとnは整数)で表すこともできる小数は2進数で表現できるため、正確に格納できます。

なおこのような誤差は、AliceScript固有のものではありません。IEEE 754の2進浮動小数点形式を採用しているシステムでは、同じことが起こりえます。

回避策

許容範囲を決めて値を比較する

二つの浮動小数点数数値型数を比較するとき、例えばそれらが等しいかを調べるときに==を使うのは危険です。両者が全く等しい場合のみ等しいと判断するのではなく、「両者の差の絶対値がある程度であれば等しいと認める」など許容範囲を決めて比較する方が安全です。次の例は、許容範囲を定めt、0.000001未満の差の場合に等しいと判断します。

import “Alice.Math”;

///二つの小数が等しいと認められるかどうかを評価します
///パラメータ a:一方の値
///         b:もう一方の値
/// tolerance:許容できる誤差の最大の値(この数値は常に正)     
function NumEqual(number a,number b,number tolerance)
 {
    return (math_abs(a - b) < tolerance);
 }

var numA = 0.1 + 0.2;
var numB = 0.3;
///許容範囲
var tolerance = 0.000001;
if(NumEqual(numA,numB,tolerance))
 {
    print(“2値は等しいと認められました”);
 }